質問
相続人の中に認知症で通常の日常生活をおくることができない者がいます。遺産分割協議はどのように進めればいいでしょうか。
回答
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人全員が協議の内容を理解して成立させなければなりません。
認知症や知的障害により判断能力が不十分な方は、財産の管理を行うことができず、遺産分割により自身の利益を十分に確保することが困難となります。認知症の方が事理弁識能力を欠く常況にある場合に(例えば、家族の名前や生年月日などの日常的な事柄が分からなくなる等、判断能力が全くないような状態)、その方が、当事者として行った遺産分割協議は、その方の意思能力がないことを理由に無効となる可能性が高いです。
このような場合には、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、成年後見人の選任を申し立て、選任された成年後見人との間で遺産分割協議を行う必要があります。
成年後見人は、本人の財産に関する管理権と包括的な代理権を持つため、本人に代わって遺産分割協議を行うことができるのです。
なお、成年後見人を選任する程度までに判断能力が低下していない場合には、補佐人、補助人の選任を検討すべきです。保佐人・補助人が本人に代わって遺産分割協議を有効に成立させるためには、保佐人・補助人に代理権を付与する旨の審判が必要になります。保佐人・補助人の選任の審判申立の際に、合わせて、遺産分割の代理権を付与する審判の申し立ても行います。