遺留分減殺請求において特別受益が問題になるのは、遺留分額の算定の基礎となる財産を把握するときに、特別受益財産を持ち戻すかという場面です。
すなわち、共同相続人のなかに、被相続人から生前に婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けていた場合には、相続開始1年前であるか否か、損害を加えることを知っていたかどうかに関わらず、遺留分算定の基礎財産に算入されます(民法1044条による同法903条の準用)。
特別受益と認められた場合には、計算上、贈与財産が持ち戻される結果、相続開始時の遺産総額が大きくなります。
特別受益として認められた場合
例えば、遺言によりすべての財産を相続した相続人に対する特別受益が認められた場合には、遺産総額が大きくなる結果、遺留分権利者は、相続開始時の財産を基に予想していた額よりも大きな権利を取得することができることになります。
他方で、遺留分権利者である相続人に対する特別受益が認められた場合には、確かに遺産総額は大きくなりますが、同時に、すでに特別受益として遺産を前もって受領していると評価されるため、実際の請求額が少なくなることになります。
下記の計算式をご参照ください。遺留分権利者の特別受益額が大きくなれば、遺留分侵害額はその分小さくなります。
遺留分侵害額=遺留分額-(遺留分権利者が相続によって得た財産額-相続債務負担額)-(遺留分権利者の特別受益額+遺留分権利者の受遺・受贈額)
このような事情があり、遺留分減殺請求をする側もされる側も、特別受益を主張することができないかを徹底的に調査をすることが必要になります。